ひとつ屋根の下いなつきれんげ幼稚園
園庭より園舎大屋根を望む
天井と梁を全て木現しとした内部空間
大屋根架構が現しになった保育室
いなつき幼稚園様邸詳細
竣工年月 | R2.6 |
所在地 | 嘉麻市 |
用途 | 幼稚園 |
構造・規模 | 木造・2階・延床888.54㎡ |
『CLTを活用した、木に包まれる大屋根の空間』
福岡県筑豊嘉麻市の丘陵地帯に建つ、認定こども園です。 丘と道路と水路に挟まれたフラットな地形を生かし、大屋根の園舎を目指しました。 木造で大屋根の大空間を実現すること、連続した空間を創出するために耐力壁を限りなく少なくすること、 その両立が設計の課題でした。一般的な木造軸組工法の筋交いでは耐力の限界があるため、筋交いの代わり にCLT(直行集成板)パネルを採用しました。高倍率な耐力壁を短辺方向に配置し、耐震壁として配置した CLTパネルと1,820mmピッチで長辺方向に架け渡した梁で大屋根を支えます。前例の無い構法であったた め確認審査機関との協議を要しましたが、大屋根の大空間を実現できました。 柱・梁・CLTパネル、屋根下地の合板は、立地条件的に防火の規制が無いため内外の多くの部材を木造現し にしています。大きな屋根の園舎は高い天井の空間と、その下の小さな木造の二重構造になっています。 天井と屋根裏は、114条区画(強化天井)により厨房等の設備を収めるスペースとし、大容量の換気設備を設 け、大空間全体の空気の流れや温熱環境にも配慮して、室内環境を制御する役割を果たします。 園庭側はCLTパネルと支柱により屋根を持ち出し、深い軒下空間をつくり、雨を防ぎ、日射を制御する機能 を持たせています。 こどもたちが大屋根と木質空間の中で、のびやかに成長できることを願い設計しました。
『その地域、その場所だからこそ成立し・存在する建築を目指して』
炭鉱の町として栄えた筑豊は、産業と文化が存在するまちでした。 木造の劇場や炭鉱王の豪邸が現在でも観光資源として残っています。それは木造の文化が、記憶の中に刻み 込まれていることだと思います。飯塚市、嘉麻市に2棟の認定こども園を設計し、保護者や地域の方々から は「やはり木造は良い」との声を多くいただきました。 地方にはまだ木造の技術が残っています。建設に参加してくれた職人さん達は、腕も心意気もある人々でし た。そこにCLTという新しい技術を加えることにより、今までにない木造空間へ挑みました。 その地域、その場所だからこそ成立し・存在する建築を目指したいと思っています。木造は大きな役割と可 能性を担っています。